明日は千秋楽


好きな人が笑ってる。好きな人が歌ってる。好きな人が喋ってる。
手紙を書く。きっとまた渡せない手紙。東京宝塚劇場の向かい側、日比谷シャンテの地下だよ。知ってるだろ?

苦しみをごまかすために好きになったわけじゃないのに、あなたで苦しみを消すのが癖になり、いつのまにかあなたそのものが苦しみになる。まったく女というものは……
高校の時から何も変わっていない。いつも何も覚えていない。衝動的。待てない。



今日、雨の日比谷公園は本当に誰もいなかった。
丸一日散歩していたような気がしていたのにまだ20分も経っていなかった。春特有の、時間の感覚が狂う感じ。花はツンと咲いていた。
ビルが濡れていて、なんだか怒ってるみたいに見えた。私だって濡れたんだから不機嫌だ。お前だけだと思うなよ。
誰の気持ちも分からない、混乱する。みんなが何を言っているのか、やっぱり今日も分からない。同じ日本語で喋っているのに。
私は正確に捉えようとしすぎているのかもしれない。強迫観念が強い。間違っちゃいけないって思ってる。他人が間違っていたら愛おしく思うのにね。間違って怒られたこともないのにね。
他人に理解されることは嫌がるのに、自分は他人を理解しようとするなんておかしいんだよな。性格がモラハラじみているんだよ私は。

日々が引っかかっている。
誰かそこにいるのか?
私はやっぱり恐ろしいみたい。臆病者なんだから優しくしてくれよ。でも、私を完全に無視して進む時間や季節や人々に安心したりもする。その方がいい。優しいのは苦しいから。別に泣きつきたいわけじゃない、共犯者が必要なんだ。
でも待って。
今日の雨が全て洗い流してくれたのだとしたら?
いったんリセットした方がいいんだよ。ただの状態だよ。会いたい人にだけ会おうね。
明日起きるひとつの輝きを、受け入れる準備を今夜はしよう。