マイ・プリンセス

こっそり塔から降りたら、密林の中で光る小さな石を見つけた。
ねえ恋、なんて寿命の短いドラッグなの?
たったひと月やそこらで薄剥がれてゆき、私が手にした恍惚が、酩酊が手を離れてしまう。あとは副産物。出会った衝撃の余韻が鳴ってるだけで、麗しくない。
日が経つと多幸感が薄れて、私の頭はいつも通り次のロマンスへの準備を始めて、でも私は行かないで!って言ってる。心を敏感に保って、夢を見続けてくれ、いつも私ばっかり夢で嫌なのに、やっと自分も体温のある人間だって分かったのに、また慣れちゃうの?もうシラフになんか戻りたくないよ!魔法よ解けないで。
今までもこれからも、立体的なロマンスはいらない。私の夫が鳥籠の中で言っていること、私には分かってる。さえずって、擦り付けて、血が出るほど引っ掻いたり抓ったりして、一緒に眠る。そういうこと以外は意味がないし、そういうことのために生活がある。生きている。
それなのに私たちふたり、きっとそのうち現実から見放されて、戻れなくなっちゃうね。でも、そうすればこんどは夢の中に戻れるのかも。
どっちが本当の場所か私には分かっているから、安心して手を繋いでいてね。つま先にキスして思い切りビビってていいよ。